1人が本棚に入れています
本棚に追加
この発言にはさすがの二人も、うなだれた。
山伏は錫杖を両手で持ちながらうつむき、作業員は腕組みをし眉間にしわを寄せた。
『だからのり弁でいいのだ!迷った時はのり弁に限る』
『いやせめて特のり弁だべ。後悔するって』
『いいや、昨日は贅沢をしたのだから今日は300円!』
『プラス90円でタルタルソースとメンチカツ!今夜はビールは無しで!』
本人はのんきだというのに、守護霊の二人は一触即発の状況である。
うぬぬ〜といがみ合い、300円!タルタルソース!など連呼している。
ついに山伏が錫杖を掲げた。
『こうなったら!!!』
シーリングライトで先端が輝いているそれに、作業員はひるんだ。
『そ、それはそういう使い方しちゃいかんだろ!』
ヘルメットを被っているというのに頭を覆うようなポーズを取った。
『ど ち ら に し よ う か な』
錫杖でチラシの、のり弁と特のり弁を交互に指し、まさかの「神様の言うとおり」を始めた山伏。シャン、シャン、シャン・・・。
『それかーい!』
突っ込むしかない作業員。
気のせいか本人は、それに合わせて、のり弁と特のり弁に視線を動かしている。
『か み さ ま の い う と お り』
『な の な の な す び の か き の た ね』
『違うって!なのなのなすびの、はげあたま!』
『ハゲ!なんたる失礼な!柿の種じゃ!』
『はげあたま!』
『柿の種!』
二人は「どちらにしようかな」の歌詞でもめだした。
『はげあたまだって』
『柿の種だ』
本人のすぐそばで、山伏と作業員が顔を真っ赤にしていがみ合っている。
ここまできたら守護霊同士、負けられない意地がある。
最初のコメントを投稿しよう!