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守護霊の二人は、疲れ始めていた。
山伏は錫杖をシャリーンと響かせた後わなわなし、作業員は叫ぶように鳴らした警笛をくわえたまま目をつむっている。
一体この若者は何を選ぶのだろう。
夕食の弁当一つで自分の守護霊、しかも二体が余計なお世話状態で出現し、喧々囂々となり収拾がつかなくなっている。
二人の意見は食い違い、時に脱線し、見守るのではなく「彼が何を選ぶのか」にいちいち振り回されていた。
山伏は『のり弁にせい』と囁き、作業員は『だから特のり弁にしろって』とぼやいた。若者はまだ、チラシを見続けている。カチカチ、秒針の音が規則正しく聞こえる。
ふと『特がつく方が満足するのか』と山伏が言い出し、『めんどくさいから、のり弁でいいべ』と作業員が答える。ついにお互いが譲り合い始めた。
二人は床にあぐらをかいた。
『のり弁には白身フライとちくわ揚げ、きんぴらと漬け物もついとるな』
『これで300円って、特のりじゃねぇけど得だよな』
『ははは!確かに!お主うまいこと言うなぁ』
『はははははは!』
そして二人で笑い合っていた。
何やら若者が身支度を始めた。
「お、あったあった」
二つ折りの財布を無造作にジーンズのポケットへ突っ込み、ダダダと出かけてしまった。その勢いで弁当屋のチラシがふわりと舞った。
守護霊たちがぽかーんとした表情で、玄関の方に首だけ向けた。
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