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「腹減ったなー」
「やっぱお手軽のり弁、かな」
『そうさのう、300円きっちりで、きりが良い』
「あー、タルタルソース、美味いんだよなぁ」
『そうだ!フライにはタルタルはかかせないぞ』
『なぬ!』
そう叫んだのは、修験者姿の男だ。
その声を耳にして、にやりとほくそ笑んだのは、安全第一のヘルメットを被った男だった。
『お主は、こやつの?』
『おう、守護霊ってやつだべ』
「特のり弁の方がいいかな〜」
『そうそう!ソースの他に、メンチカツも付いてるからな!』
『いかん!カロリーの取り過ぎになる』
当の本人は弁当屋のチラシを見ながら、うーん、うーんと悩んでいる。
彼の右側に山伏、左側に作業員が一緒になってそれを覗き込む。
『あんた、そんな格好してのり弁なんて食ったことねえだろ?』
山伏は胸を張って、錫杖をついた。
『修験の道に入る前に、食べたぞ』
『お主はタルタルソースが当たり前なのか?』
『特別な時、だよ。今日は特別かなーって日に選ぶんだべ』
作業員はヘルメットを指先でコンコンと鳴らして、そう言った。
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