雪よ林檎の香のごとく

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 もう一度、瞼を微かに開く。 目の前で、くるりと何かが揺れる。柔らかな、ポニーテール。 待って、なんで、なんで未央奈が。未央奈がそこに立っているの? 「——じゃあね、またいつか、会えたらね」 あの時と同じように、ほころぶような、満開の桜のような笑みを浮かべて。 漆黒の廊下の上を、軽やかに歩いてゆく。 待って。待って、私は——。 窓に映る、金縁の鏡。その中に立ちすくむ、自分。 雪はひたすらに降り積もる。 世界を白銀に染めてゆく。 『高三女子生徒 行方不明』 今日は、1月25日。
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