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「バックだと、いつもりょーごの顔、良く見えない」
「だからって、なんでここなんだ」
「……?良く見える」
「そ、うじゃない……」
いくら言葉で抵抗しても、巻き付いた腕はびくともしない。
昼間から行為に及ぼうとしている時点で、既に常識からは掛け離れている気がするが、それが鏡の前ともなれば、良吾の頭はパンク寸前だった。
「オレと、したくないの」
「違う!もっと、普通にって、あっ」
「フツー、嫌い」
ムッとした英介の手が、するりと裸の腹を撫でると、それだけで、膝立ちの脚から力が抜けそうになる。良吾は身震いで快感がバレないように、腹筋に力を込めた。
英介の腕に触れ、宥めるように声を掛ける。少しずつ身体を離そうとするが、なかなか上手くいかない。
「え、英介。俺、ベッドが」
「ベッドまでもたない」
「っ、まて……ちょ、うわ……ホントにっ」
「大丈夫、たってる」
パンツの上から触れられ、ぞわりと全身が逆立った。
いつもなら、何が大丈夫なんだと突っ込むところでも、いたずらに動く手のせいで話すことすら難しくなる。
直接与えられる刺激も、熱を孕んだ英介の声にも、いちいち身体が反応してしまう。
「今日はいっぱいするって、約束」
「した、けど、これは聞いてないっ」
「言ってないもん。えっちの内容、はじめから決める人、いる?」
「知らなっ、うわ?!英介っ……ンん」
履き口から入り込んだ手に気を取られていると、すかさず首筋に濡れた舌が這う。
どこから止めたものか迷う暇も無く、快感に呑み込まれていく。
「いれたい……ガマン、嫌い」
「ひ、ぅ……お、押し付けるなっ」
「りょーごもキモチイーにしてあげるから。お願い、おねがい」
「うっ……」
鏡越しに、強請るような瞳で英介が見つめてくる。子犬にしては獰猛で、子どもにしても下心があり過ぎる。その瞳が、良吾を捉えて離さない。
こうなったら、先の展開は分かっている。英介の“お願い”を、良吾が断れた試しがないのだ。
「と、特別だからな」
辛うじて言えた言葉すらこの始末で、良吾は頭を抱えた。
(おわり……?)
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