第二話 変化

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 午前中授業を受けて、昼休みには屋上で花火と彼の作ったお弁当を食べる。 「うさぎ切り……なんて、花火は意外と可愛いものが好きなの?」 「ちげえし! この形で切ると食べやすいからだっ!」  他愛のない会話をして、全体的に茶色のお弁当をつつく。彼が言うには、中身の半分は大体前日の晩御飯の余りだという。彼の家は父子家庭で、料理のできない父親に代わって作っているのだとか。家事も全てこなしているという。意外な話だった。 「一温って土日何やってんの?」 「図書館か自宅で勉強」 「うわぁ、ガリ勉じゃん……」  明らかに引いている花火に、「勉強以外することが無いだけだよ」と言うと何か閃いたように「あっ」と声を出す。 「じゃ映画観に行かね? 観たいやつあってさ」 「……それは、無理だよ。勉強しないと……親に怒られるから」  顔を背けると、花火は「そっか」とそれ以上聞いてこなかった。  放課後、図書室に行って勉強をしている間、花火はどこかに行っているけれど、閉館の時間になると現れて一緒に帰った。方向は真逆なのに。  そうやって特別なことは何も無い毎日が過ぎて、初めての週末を迎えた。  午前中、母親から送られてきた二つの荷物を開けると、一つには各教科ごとに問題集が一冊ずつ入っていて、もう一つには一週間分の食事となるレトルト食品が入っていた。そして、届いたらメールするように書いたメモ。  僕は「おはようございます。荷物届きました。ありがとうございます」というお決まりの文面を書いて送った。返信はいつもない。  昨日で一週間分の問題集を終わらせていたので、その中から一冊取って筆記用具とICカード、携帯電話を持って家を出た。学校を挟んで向こう側、歩いて十分くらいのところにある図書館に向かう。
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