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自席に着くと、よく絡んでくる不良が近づいてくるのが分かる。
「お前なんで陽川と急に仲良くなってんの?」
机を蹴飛ばされ、前の席の椅子に当たって大きな音がする。
「あいつもホモなんじゃん?」
「ははっ! マジかよ! キモっ!」
「つか今ヤってきたんじゃね? ザーメンくせえ!」
特に今まで自分に向けられる暴力も暴言も、何も思うところが無かった。暴力に関しては痛みはあるものの、ゴムの膜のようなものが自分の周りに纏わり付いているような感覚で、自分に起こっていることなのかどうかさえ、鈍感になっていた。
「ホモダチできて良かったじゃん、風岡君!」
――だから、昨日忠告したのに。
心底嫌になった。こうなることがわかっていたから、誰とも関わりたくなかった。
陽川花火は、何を目的として僕に近づいてくるのか。嫌がらせをしてくるこれらの方が余程分かりやすくていい。
残りどれくらい続くか分からない人生の道の途中に転がっている石の一つでしかないから。一年後には石があったことさえ忘れているだろう。
でも、自分のせいで誰かに迷惑を掛けるのは嫌だった。勝手に向こうから近づいてきたとはいえ、結局一緒に行動してしまったのは事実。僕が無視して、拒絶していれば良かったのだ。そうしなかったのは、自分の責任だ。
と、不良達が波が引くように僕の周りから離れ、自席に戻っていく。見ると教室の出入り口に陽川花火が立っていた。僕は数学の問題集を開き、視線を落とす。
「さっきは悪かったな」
彼はそう言って僕の机の脇を通り過ぎ、僕の後ろの席に座った。
言わなければ。「もう関わるな」と。もう、何も面倒を起こしたくはない。帰りにもしついてくることがあれば言おうと決めた。
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