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――終わった。
俺達の最後の夏が、二度、終わった。
「聞いてねえよな、社会人の彼氏がいたなんて……」
トボトボと隣を歩く俺の相棒が、ただでさえキャッチャーミットみたいな顔をさらに皺くちゃにして鼻水を啜る。
「っうおぉぉぉぉぉッ!!!」
野太い雄叫びが、駐車場に響き渡った。
もちろん、俺のだ。このままお通夜みてえな空気のなか、バスでなんて帰れっかよ。
「学校までランニングで帰る奴、俺についてこい!!」
「「「おうっ!!」」」
「おいおい、試合の後に冗談だろ? 10kmはあるぞ」
引き留める監督の声を無視して、俺達はバッグをバスに放り込むとヤケクソとばかりに駆け出した。
「ファイッ、オー!」
「くそ、受験には負けねえぞ!」
「オーッ!」
「三度目の正直だ!」
「オーッ!」
「早く大人になりてえぇ~!!」
「ウォ~ッ!!」
そんな俺達の後ろ姿に、歩美と監督が顔を見合わせながら、
「……あいつらに悪いことしちまったな」
「そうですね……」
なんて会話を繰り広げていたことを知るのは……
まだしばらく先の話。
Fin⚾*
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