永遠の眠りにつく前に

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だからどうか逃してあげて欲しい。 死そうと思うほどの地獄から。 どうか生きていける居場所を与えてあげて欲しい。 死にたいくらい辛いその場所に居続ける価値などない。 感情が死んで無表情のまま涙しか出てこない人に、 「頑張れ」という応援も、「もっとどうにかできないか」という説得もいらない。 我慢して耐え続けることならもうやってるから。 その人に『今』何が必要なのか、どうやって手を差し伸べて欲しいのかを、 きちんと聞いて見逃さないで欲しい。 助けてあげて欲しい。 私の『それから』は実に幸せなものだった。 また恋をして別れが来ても、死にたいと思うことはなくなった。 自分には家族という居場所があるから。 勉強もして就職もして、たくさんキラキラ輝くような恋をして、結婚して。 愛しい我が子を腕に抱いている。 あの日もし永遠の眠りについてしまっていたら、 こんな素敵な日々は送れなかった。 幸せなんてないと絶望して諦めた『未来』にこそ、 たくさんの幸せがあったーー。 パレットがもし黒くぐちゃぐちゃになって途方に暮れてしまったら、 一度綺麗に水で流してほしい。 そしたらまた、自分の好きな色をどんどん並べていける。 自分の新しい世界で、 それからの幸せな日々を見つけていける。 生きてさえいれば、それでいいのだから。
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