8人が本棚に入れています
本棚に追加
私はどこにも居場所がなかった。
学校にも、家にも、どこにも。
そんな時に付き合いだした龍臣が世界の全てになることに、時間などかからなかった。
2人で色んな『初めて』を経験した。
手を繋いで、キスをして、体を重ねた。
一緒に過ごした時間全てが、砂漠のような梓沙の渇いた心に幸せな潤いを与える。
初めて、人の心の中に居場所を見つけた。
しかし2つ季節が過ぎた頃、
龍臣は他の女の子を好きになった。
私はまた、居場所を無くした。
たったひとつの居場所を。
一緒に過ごした季節よりも多くの季節が過ぎていく中で、龍臣は何人かと付き合って別れ、また付き合った。
龍臣は新しい彼女ができるたび、
「流れで付き合っちゃったけど、別れたらおまえとまた付き合いたいから待ってて。」と、
呪いのような言葉を囁いた。
それでもその言葉を信じて待っていたのは、
別れてもなお、龍臣は私にとって世界そのものだったからだ。
ある日のこと、龍臣がまたちがう彼女を作った。
私が小学生の時から可愛がっていた後輩。
その時だ。
何かが壊れだした音がした。
最初のコメントを投稿しよう!