8人が本棚に入れています
本棚に追加
心に入った小さいヒビは瞬く間に広がっていく。
まるで脆いガラスのように。
街中で龍臣と後輩を見かけた日、楽しそうに笑い合う2人を見て、
私は自分の居場所なんてとっくになかったことに気が付いた。
この日この時、世界は完全に消え去った。
その日の夜、永遠の眠りにつくことにした。
生きていたって幸せになんかなれない。
欲しいものは手に入らない。
ズタズタに傷付いた心から血が流れる。
これ以上切りつけられる場所なんてもはやない。
もし心が目に見えるのなら、
連動して体から血が流れるなら、
自分で手を下さずともそのまま眠るように終わらせられたのに。
頭が割れるように痛い。身体に力が入らない。
薄れゆく記憶の中で、ただ天井の白を眺めていた。
するとその時、
懐かしい声が響いてきた。
「死なないで」
「ごめんなさい。私たちがあなたを愛しているから。」
何度も何度も消え入るように聞こえたのは、
母の声だった。
最初のコメントを投稿しよう!