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目が覚めて最初に瞳に映ったのは、
最期に見たはずの部屋の天井の白。
私は死ななかった。
それからの日々は、目まぐるしく変わった。
私が目覚めて「彼を見なくて済む世界が欲しい」と言うと、
親は直ぐに転校の手続きをして引っ越しを手配した。
新しい場所で、新しい自分をくれた。
真っさらな世界をくれた。
両親は言った。
「生きてさえいてくれればいい」と。
私は初めて知ったのだ。
自分が全てだと思っていた『世界』がどれほど小さかったのか。
全てでも何でもなかったことをーー。
あの時の両親の行動がなければ、
もしかしたら私はここにいなかったかもしれない。
死にたいと思う本人は、
きっと自分の世界はそこしかないと思い込んでしまう。
自分では気付くことができない。
でも周りの大人は知っている。世界は広いということを。
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