永遠の眠りにつく前に

4/5
前へ
/5ページ
次へ
目が覚めて最初に瞳に映ったのは、 最期に見たはずの部屋の天井の白。 私は死ななかった。 それからの日々は、目まぐるしく変わった。 私が目覚めて「彼を見なくて済む世界が欲しい」と言うと、 親は直ぐに転校の手続きをして引っ越しを手配した。 新しい場所で、新しい自分をくれた。 真っさらな世界をくれた。 両親は言った。 「生きてさえいてくれればいい」と。 私は初めて知ったのだ。 自分が全てだと思っていた『世界』がどれほど小さかったのか。 全てでも何でもなかったことをーー。 あの時の両親の行動がなければ、 もしかしたら私はここにいなかったかもしれない。 死にたいと思う本人は、 きっと自分の世界はそこしかないと思い込んでしまう。 自分では気付くことができない。 でも周りの大人は知っている。世界は広いということを。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加