お子さまランチとの訣別

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お子さまランチとの訣別

まさしは、夫婦からおそわった甘酸っぱい味のチキンライスと甘めのふわふわオムレツを組み合わせた特製オムライスが友人たちに不評だったことに大きなショックを受けた。 (俺の好きな味は、子供のもので、高校生ともなると普通は受け入れられないんだ) (自分も大人の味にならないといけない。もう、お子さまランチは卒業しないといけない) まさしは、お子さまランチと訣別する決意を固めて受験勉強が忙しくなったと夫婦に謝り、ファミリーレストランに通うのを止めた。 そのまま上京し、大学に進学したまさしにとってお子さまランチと離れるのは予想以上に簡単だった。もともと、実家の母は和食等であるし、学食では和洋中と豊富なメニューの中からお子さまランチとは離れた味を選べばよい。 (オムレツやハンバーグなどの洋食を食べるとお子さまランチの味を思い出してしまうので極力さけるようにしたのだ) こうしてまさしの口は和食や大人向けの味付けにすっかり慣れていき、そんな中に舞と出会って結婚したのだ。 ある日の残業帰りに大人にお子さまランチを出すという、あの頃を思い出す特別な店を見つけるまでは。
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