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思い出の味
ずっと遠ざけて、封印していたお子さまランチともう一度出会ったのは、新しいプロジェクトが始まり、残業も多く、リーダーとしてのプレッシャーに押し潰されそうになって疲れきっていたある日のことだった。
普段の道が工事中で通れず回り道をしたら
道の途中に一軒の小さなレストランが現れた。
何気なく目にした看板にかかれた『大人のためのお子さまランチを提供します』という文字に
釘付けとなったまさしは、気がついたらその店のドアを開けていた。
中に入ると白髪の紳士が一人で切り盛りしていた。とまどいながらも注文すると、店主はお子さまランチを出してくれた。それは、昔通ったご夫婦の店のものととても良く似ていて、とても優しい味だった。気がつくとまさしの目からは涙が溢れ出していた。
疲れ果てていた心身もいつのまにか癒されたのだった。
それ以来、まさしはその店の思い出のお子さまランチの虜になり、残業帰りには必ずその店に運ばずにはいられなくなった。
『だまっていてごめん。舞には話そうって何度も思ったんだけど、やっぱり大の男がお子さまランチっていうのは恥ずかしくて。』
『高校時代の同級生のように、舞に困った顔をされたらどうしようって怖かったんだ。』
『夜食を作ってくれるっていったのに変に拒否してごめん!』
『浮気の心配をかけたことも、、僕には出会ったころからずっと舞しかいないから』
まさしは舞に向かってそう語り、必死に頭をさげたのだった。
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