【6日目】

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長島よりも10センチ以上も高い友弥だ、まさしく上から言われて長島は言い返そうとするが言葉が出ない。あんたより自分の方が数倍いいだろうと言いたくても、その確証がないのだ。僅かに視線を下げかけて辞めた、奈々の言葉を確認したくもない。 「プロッターの用紙を持って行くのか?」 友弥が棚を確認しながら言う。 「はい、あ、じゃあ二本お願いしていいですか、予備も置いておきたいです」 ああ、と言って友弥は軽々と二本のロール紙を小脇に抱えた。奈々もインクカートリッジを抱きかかえ先にドアへ向かう。 「あ──」 声を上げかけた長島を友弥は睨みつけ、市松と遠藤が肩を撫でて止める。 それを見て安心したのか、友弥は奈々を連れて部屋を出ていく。 「人の恋路を邪魔すると」 「馬に蹴られて死んじゃうよ?」 市松と遠藤に諭されたが面白くない、長島はふたりの手を振り払い部屋を出た。 ぞろぞろと5人は営業部に戻った、まとまって帰ってきた事も気になったが、それ以上に不機嫌すぎる長島が気になった。 「どした?」 月尾が聞く。 「別に……」 話して聞かせるほどのことでもない、と言うより話したくない。ため息交じりに言うと、月尾は「そっか?」で終わらせたが、隣の島から椅子を滑らせて石沢がやってきた。 「まあ、どうしたの? 相談なら乗るわよ?」 嬉しそうに言うのが気に入らない。 「お母さんに相談するほどの事じゃないです」 石沢はお母さんが誰なのか判らずきょとんとしたが、月尾の視線が自分に刺さっていたのでそれが自分の事だと判り憤慨するが、長島はもう聞いてはいなかった。 (くそ、どんだけだよ) XYプロッターの脇で予備の用紙をどう置くかで話していた奈々と友弥が、今度は用紙のセットもふたりで始めた。 友弥は慣れないらしい、奈々に説明を受けている。話す奈々の嬉しそうな顔が憎らしく見えた。 「ち……っ」 小さな舌打ちが出た。ちょろいと思っていた相手に、とんだやけどをしてしまった。 (もういいや、来年期待……いや、やっぱ社内は勘弁だ。今度クラブ行こ) ひとり計画し納得して膝を叩くと、PCに向かう。 こうして春の嵐に見舞われた村松重工横浜支社の営業部に平和は訪れた。 * 「全く。君はつくづく、どうしようもない男に好かれるな」 「何故だか引き寄せちゃうみたいですね。部長に監視しててもらわないと、また危険な目にあってしまうかも」 「任せておけ。一生見てやる」 「はい、よろしくお願いします」 終
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