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「──判った、とりあえず風呂に行こうか」
口は塞がれていない、はっきりとした声で言えた。
「がまんできないのぉ」
今度は腰までつかってさらに押し付ける。
「せめてベッドへ」
「やあだ」
甘い声で言って、右大腿の内側で友弥の頬を擦った。
「ここでか」
「うん」
その声には欲情が混じっていた、行為と声に、友弥だって感じるものはある。
「──じゃあ、脱いで」
「はあい」
奈々は素直に下着とストッキングに手をかけ、一度にそれを下ろした。身も屈まずに下ろせるのは大腿の中ほどまでだ。完全に脱ごうと身を屈めようとすると、その唇を友弥の口で塞がれた。立ち上がりながらのキスで、そのまま壁に押し付けられる。
「ん……ん……」
友弥のキスに小さな声で応えていたが、友弥の指が足の付け根に吸い込まれ声は大きく、息は荒くなる。
奈々は下着から手を離して友弥の背に腕を回した、ジャケットにしがみつき友弥がくれる快楽に溺れる。
奈々が欲しがるのは間違いなかった、とっくにそこは濡れそぼり、たやすく友弥の指を受け入れいやらしく粘着質な音をあげる。これ以上友弥が何かするまでもないほどに。
そのままではストッキングと下着が邪魔だった、だが脱がせるのももどかしい。友弥は奈々の左足に手をかけ、右へと捻るように回した。そのまま反転し背後から責められるのかと期待した奈々を裏切り、友弥は奈々の左足を、壁についた自身の右腕に掛けるようにし、下半身だけ捻った状態で侵入してきた。
「や……っ、あん……!」
一番奥まで一気に突き上げられた。奈々は下半身の向きに合わせ上半身も捻り壁に掴まろうとしたが、友弥がそれをキスをすることで阻止する。
様々なところから水音が響く、肉がぶつかり合う音もした、加えて奈々の誘うような喘ぎ声も。
「──声は、少し我慢しろ」
場所は玄関だ、廊下へ音が漏れそうな気がした。
「ん……っ」
返事なのか喘ぎ声なのか判らない声がする、うっとりとした目が友弥を捉えた。
「──奈々……っ」
さらに体を押し付けた、奈々の右のつま先が床から浮き上がる。
*
廊下を抜けリビングを抜け、リビングの左手にあるのが寝室だ。
リビングのカーテンは開け放たれていたが、閉める心の余裕はなかった。深夜の横浜港の夜景は、静かに灯りをともしていた。
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