【2日目】

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「そういう言い方はセクハラよ、まあ確かに成績はよかったけど」 橋向はビールジョッキを傾けながら答えた。 「(美女が言うセクハラは許せる)ねえ、藤代さんは? 元から営業希望だったの?」 言われてソルティライチを飲もうとしていた奈々は、手を止めた。 「ううん、私はどこでもいいって希望を出してたよ。でも専門学校も設計の勉強をするところだったから、ここに配属されたみたい」 「あ、短大出て専学出て入った子がいるって聞いたけど、藤代さんかな? 同じ年じゃないかって」 「あ、そうかも。卯年?」 「卯年!」 「わあ、同じ年だぁ」 思わずお互いに、両手を頭につけウサギの耳を表した時、 「藤代」 一番遠くから声がかかった、奈々が嬉しそうな顔で振り返ったのを長島は見た、その視線を追って思わず目を見張る、部長の金原友弥と目が合った。 「こっちへ来い」 横暴とも言える言葉だが、奈々は「はーい」と返事をして立ち上がり、いそいそとそちらへ向かう。 その背を見送ってから長島は聞いていた。 「──なんすかあれ、パワハラっすか?」 市松たちは笑い出す。 「パワハラっちゃあパワハラかなあ。まあ仕方ないわね、社内じゃ一応我慢してるみたいだし」 植木が答える。 「我慢? え、恋人? 奥さんですか? 苗字違うけど」 職場が同じだと、わざと別姓で名乗る場合もあると聞く。 「恋人よーん、しかもまだ付き合って半年の、初々しいころ!」 市松が自身の体を抱き締め、悶えながら言う。 「えー、部長が一番若い女を引っかけるって」 「まあ、いろいろ事情がね。まあ仕方ないのよ」 遠藤がうんうんと独り納得しながら答えた。 (いや、待て待て、俺の楽しい社会人ライフが) 思わず横目でふたりを確認していた。飲み会の席で呼びつけた割には、隣どうしに座ってもイチャイチャベタベタする様子はなかった。付き合いたての初々しい頃とは見えない、金原友弥は淡々と酒を飲み、奈々は笑顔で話しかけている。 (単に俺から引き離そうと?) 下心がばれたかと肝は冷えたが、 (なあに、てめえみたいなおっさんには負けねえよ) 違う闘志が燃え上がる。 * 20時、退店を促され皆で店を出た。 「ぶちょー」 奈々が真っ赤な顔で目も座らせて友弥を呼ぶ。 「また、今日はえらい飲んだな」 奈々を支えながら友弥は言う。 「えへへー、だって嬉しいんだもーん」
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