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言って友弥に抱き着いた、そんな姿を見て皆はニヤニヤしている。
「悪いな、こんな状態だから俺らはもう帰る。みんなは二次会か?」
皆揃って「はーい」と声を上げる。
友弥はスラックスの後ろポケットから財布を取り出すと、そこから1万円を出して「足しにしろ」と幹事に手渡した、幹事は素直に「ありがとうございます!」とそれをポケットにしまう。
「じゃあ」
友弥は奈々を抱き寄せ皆に背を向け歩き出す、その背を見送り長島は呟いた。
「恋人の割に堂々としてますね」
「まあなあ、ふたりは一緒に住んでるし」
すぐさま月尾が言う。
「へえ、同棲ですか」
「そゆこと。いいよなあ、眺望最高のタワマンに若い年下女と暮らすなんて、理想じゃん」
「やっぱ年下っすよねえ」
そこにだけ反応してしまった。
「うん、やっぱ年下よぉ」
月尾も酔っているだろう、大きな声でそんなことを言って石沢に怒られた。
(マジすげーじゃん。部長クラスになるとタワマンに若い女引きずり込めんだな)
近くにタワーマンションは立ち並んでいる、そのうちのひとつだろうかと想像できた。
奈々は友弥の腕にしがみつきながら、鼻歌を歌っている。足元はフラフラだ。
「珍しいな、そんなに酔うなんて」
奈々のだらしない笑顔を見ながら友弥は言う。
「えへへー、だってー、なんか幸せだなあって思ってさぁ。友くん、やきもち焼いてくれたんでしょー? 長島くんが話しかけてくれたらすぐに呼んでくれてさー。そういうの、凄く嬉しい」
言いながらも、えへへ、えへへ、と笑っている。
「そうか、嫉妬深いとか言われないでよかった」
「嬉しいよぉ、友くんはそういうの隠さないから、好きー」
両腕で友弥の腕を抱き締める、奈々の柔らかい体が密着した。
「そうか」
「でもぉ、本当はもっとー、友くんを酔わせてー、みんなが見たって言うだらしない友くんを見たいのにぃ、友くん、全然酔わないんだもーん」
「だらしない俺? そんなの見せたかな?」
「うん、遠藤さん達も言ってたしぃ、橋向係長も見たって言ってたしぃ。それは酔ってたって言うから、忘年会とか新年会でも一生懸命飲ませようとするのに友くん飲まないしぃ。だから今日は私が飲んだらつられて飲んでくれないかなあって思ってー、頑張ちゃったー」
「いやいや、君に先に酔われたら、俺は酔えないだろう」
「酔ってましぇんよ! 九州の女を舐めたらいかんぜよー!」
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