悪魔の住みつく家

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夫は不倫をしている。 夫のありとあらゆる行動に嫌気がさしてきたのは、半年ほど前だろうか。 長時間パソコンの画面にむかって仕事をしているかと思えば、いつも特定の女性とメッセージのやり取りをしている。どこの誰だか知る由もないが、「なっちゃん」というあだ名をもつ女である。 * 不倫に気が付いたきっかけは、ある夜、夫が相変わらず書斎でやりとりをしているのを、掃除に集中していて彼の行為など関心がないようなそぶりをみせつつ、しっかり後方のドアの隙間から監視していたことに始まる。 そして夫がトイレに入ったことを確認し、前々から怪しいと思っていたその「なっちゃん」とのメッセージのやりとりを、この目でしっかりとらえたのである。 夫は何も知らぬすっきりした顔で書斎に戻り、また画面に向かい始めた。その姿を見ながら、とてつもなく腹立たしくなった。 この人と結婚など、するべきではなかった。そして半年が過ぎた今では、なぜ結婚をするに至ったのか思い出せず、むしろなぜこの人と暮らしているのか不思議に思うほどである。
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