花のごんさま

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キツネは自分がいつからその山に住んでいるのか、 もうおぼえていません。 生まれたときから、 満月の夜の雪のように白くひかる毛並みと、 新月の夜のおき火のように赤くひかる目をしたキツネでした。 親狐はそれを気味悪く思い、 まだキツネが小さいうちに巣穴から追い出してしまったので、 キツネはひとりきりで大きくなりました。 ひとりきりで 木の実をかじり、川魚をすくい、野ねずみをつかまえ。 野原を走り、毛づくろいをして、ねぐらに戻って丸くなるのも、 ひとりきり。 キツネの毎日がそうして過ぎていくうちに、 親狐はもちろん、きょうだい狐もその仔たちもその仔たちも、 年を取っていなくなっていきました。
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