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また一人、誰かが潰された音が響く。
私の目的はここの奥まで到達する、ただそれだけだ。
何億といた仲間たちが瞬時に消えていくことに、
構ってはいられない。
行く手は暗黒で満ち、足元は水浸し。
視覚も聴覚も役に立たない。先程から肝を冷やす嫌な音ばかり聞こえてくるからだ。
この水は恐らく私たちの溶解液なのだろう。早く行かないと。
胸元に抱えている宝珠を、力を込めて胸に押し付けた。
「生きてるか345番!」
「そんなこと気にしてる場合か…うあっ!」
また、炭酸水が注がれたときのようなジュワッという音がする。
気を取られていると、
私の前の黒い塊_人影だろうが、何者かに攻撃を受け真っ二つに分かれた。
彼の持つ宝珠もまとめてバラバラに砕かれる。
「(どうなってるんだ、ここは処刑所か!?
クソが!このままじゃ全滅じゃないか!)」
走っていきたい。しかし、この暗闇の中を?
それに、まだ背後からは仄かな光を感じる。
目的の場所は皆目検討が付かない一方、
入り口が後ろにあることだけは確かだ。
歩き通しだった体を一度止めてみた。
仲間の凄惨な絶叫だけが鮮やかに聞き取れる。
真っ二つに裂けた仲間のことを思い出す。
「(…畜生。)」
溶けた仲間のことを思い出す。
「(…くそっ…)」
ここに来る前の、
私を育ててくれた大勢の温もりも思い出す。
「(…この、腰抜け野郎!!)」
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