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……これは、ここ。
これは、昨年度の……。
結局、お手伝いというのは生徒会室の整理だった。
大量に机の上に積み上げられたファイルを年度別に分けていく。
私が一生懸命、仕訳をしている間、璃人は難しそうな顔をして、難しそうな書類を読んでいた。
……黙ってれば、普通にカッコいいのに。
その時だ。
コンコンと教室の扉をノックする音が静かな私たちの間に響いた。
ガラガラガラ。
「あ!いたいた!璃人!」
ノックした相手は、キャピキャピした声の可愛らしい女の人だった。
「どうしたの?吉野さん。」
入ってきた吉野さんという方に嫌な顔せず、まるで張り付けたような笑顔で出迎える。
「ねぇ、いつ終わるの?それー。」
「まだもう少しかかるかな。何かあった?」
「今から新しいクラスの行ける皆で遊びに行こうって。璃人も行こーよー。」
「俺はいいよ。皆で楽しんできて。」
「えー!」
頬をプクーっと膨らませて、璃人の腕をクイクイと引っ張る。
璃人は迷惑そうだとは思うが、そんな雰囲気を全く見せずに笑顔で対応している。
……え!何か私の対応と全っっ然違くない!?
やがて、吉野さんは諦めたのか、トボトボと教室を出ていった。
ガラガラガラ。
と教室の扉が閉まるのを見届けると璃人は深いタメ息を吐いた。
「…………。」
「何だよ。」
そんな璃人をじーっと見つめていると、私の視線に気付いた璃人が言う。
「別に。何か私と対応の仕方が違うなーって。」
「そう?」
「はい。迷惑そうなのにニコニコしてるし。……本当に女嫌いなんですか?」
「女は……苦手だ。何考えてるか全然わかんねー。」
「じゃあ、恋愛対象は男性?」
「アホか。んなわけねーだろ。」
……何だろう。
何か、可愛い。
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