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名前も知らないチャラそうな茶髪のイケメン3年生が扉越しに私を呼ぶ。
クラス中の皆が、もちろん私に注目するわけで。
「私は居ない。私は居ない。」
お経のように唱えながら、机にゴンっと顔を隠すように項垂れるも、ざわつく教室に身の隠しようがなかった。
「何か……呼んでるよ?きーちゃん。」
「う、うん。」
因みに、茜は 私が璃人に使われていることは知っている。
だからとあって、少し楽しそうな顔で茜が言うものだから ちょっと悔しい。
はぁ。と深いため息を吐くと席を立った。
「お?いたいた!あの子か?」
「……私に何かご用でしょうか?」
「媛野さん!久し振りだね!」
後ろからピョコッと顔を出したのは、いつぞやの鬼怒川さんだ。
「お久しぶりです。鬼怒川さん。」
「……この子が璃人のお気に入りなの?思ったより地味な子だけど、可愛いなぁ。」
そのまた隣で、おっとりとした口調でそう言ったのは、癒し系男子という言葉がバッチリ合いそうな、ふわふわした可愛い男子だ。
璃人を合わせ、総勢4人のイケメンが1年の教室にやって来たのだから、皆がキャーキャー言うのもわかる。
……何より、周りの視線が痛い。
「うさ希子。」
「へ?」
「ちょっと来てくれる?」
周りに人がいるからなのか、いつもは私に見せない、張り付けた笑顔でそう言う。
逆に、気味が悪い。
「い、今からですか?」
「そう。」
笑顔からは、断ると許さねーぞ。と言っているのが、ひしひしと伝わってくる。
それに、教室までわざわざ来るのだから
余程な用事なのだろうか。
「わかりました。」
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