真夏の雫

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「うわぁ、いい匂い。何作ってんの?」 「内緒だよ。出来てからのお楽しみ」  しばらくすると、夏美はテーブルの上にガスコンロを置いた。まさかとは思ったが、すらっとしたモデルさんは、両腕に土鍋を抱えてやってきた。それをコンロの上にセットすると、鍋の蓋を開けた。  牡蠣、鱈、舞茸、エノキ、白菜、葱などの具材がキムチのスープに溶け込みグツグツと煮立っており、灼熱の辛い香りが鍋の蓋を曇らせた。 「いいか匂いとは思ったけど、夏なのに鍋とは思わなかったよ。すごい熱そうだね」  赤いグツグツを近くで見ていた秋吾は青い顔をさせていった。 「あっ、今、嫌な顔をしたでしょう? 逆に考えて見て。冬にアイスクリームを食べることってあるじゃない。それの夏版みたいなものよ。暑い時に、熱いもの食べてより温まれば、新陳代謝が活発になるよ」  そういうと、夏美はキャラメル色の髪をスカイブルーのシュシュで束ねて、食べる準備を整えた。 「あれは、暖房の効いている中で食べるのが美味しいと思うんだよね。この部屋は冷房をつけずに、扇風機で涼をとっている。状況がちょっと違うんじゃないのかな」  秋吾は健康体なお嬢さんにたじろぎながら答えた。 「ものは試しよ。暑い中で食べてみましょう。あっ、もし、頭痛とかしてきたら、それは熱中症だから、その時はエアコンつけるね」  夏美はまあまあと秋吾はなだめながら自らの健康論を通した。たじたじな彼氏もせっかく、可愛い彼女が作ってくれた食べ物を粗末にできないと思って同意した。
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