真夏の雫

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「あー、美味かった!」  秋吾は汗だくになりながらキムチ鍋を完食した。しかも、最後にご飯を入れて雑煮までしようと提案するほどに。もちろん、夏美も同様であった。 「ねっ、なんだかクセになるでしょ! 冷えて体を障るといけないから、しっかりタオルで汗を拭いてね」 といいながら、夏美はタオルを秋吾の首元にあてた。 「ありがとう。でも、さっき、夏美ちゃんからタオル貸してもらったから大丈夫だよ」  秋吾は恥ずかしさを隠すように夏美の気遣いを断った。 「ごめん、お節介だよね」 「いや、そうじゃないんだけどね。なんだか恥ずかしくてさ」 「あら」  熱い鍋を食したことにより血行が促進されていたが、夏美は別な意味で頬を赤く染めると向日葵のような笑顔を振りまいた。 「片づけるね」 というと、立ち上がり、食器を流しにもっていった。秋吾も自分の食器をもっていき、そこに置いた。すべての洗い物がシンクに収まると、夏美は蛇口をひねり、洗いやすいように器に水を流した。 「後で洗うね。私、お風呂掃除してくるね」 「手伝うよ」 「いいよ。慣れていない人が食べてからすぐに動くと消化に悪いし、それに秋吾君はゲストだから、そんなに私に気を遣わなくていいんだよ」  そういうと、夏美は風呂掃除のために居間を出て行った。  献身的な愛がずっと続けばいいな。秋吾は季節の変わり目を肌で感じるかのように、例えば、夏と秋の中間を──。夏美の愛情を噛み締めた。
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