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秋吾は持参したジャージを着て居間に戻った。Tシャツに夏用のパジャマ姿の夏美が透明なグラスに水を入れてゴクゴクと喉を鳴らしながら飲んでいた。さっきまで一緒に風呂に入って彼女の裸を堪能していたが、対照的に目の前に映るのは服を着て肌の露出を押さえている姿だった。しかし、そこにはなぜか色っぽさが滲み出していた。全部見えてしまっては成立しない、マニアックな艶やかさを彷彿させた。
「勢いよく飲むね。風呂上りの一杯?」
と秋吾は訊くと、グラスをテーブルに置いた夏美は、
「そうだよ、お風呂ってけっこう汗かいているものなの。水分失うから、こうやって、いつも飲むんだ」
そういうと、夏美は再び2Lペットボトルからグラスに水を注いだ。
「秋吾君もお水飲む?」
「いや、俺はいいや。家にお邪魔する前に買ってきたお茶があるから」
秋吾はリュックから500mLのお茶を取り出し飲み始めた。
大半の大学生は入学と同時に、部活やサークルの新入生歓迎会などでお酒の洗礼を受ける。しかし、秋吾と夏美は、周りに流されず、のらりくらりとお酒をかわしてきた。二人とも法律に則り、二十歳の誕生日を過ぎてから飲むことに決めていたのだ。バカ正直にルールを守る大学生も今どき、めずらしいことだろう──。
──秋吾はなんとなく夏美がさきほどまで飲んでテーブルの上に置いていた2Lペットボトルを見た。中央に商品ラベルが貼ってあるのだが、そのラベルの下線より少し下まで水が貯まっていた。恐らく、1Lくらいは飲んだのだろう。バイト疲れを風呂できれいさっぱりと流した彼氏は、再びお茶の入ったペットボトルを口に近づけ喉を潤した。
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