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薄れることのない使者との面会の記憶とともに、イリアナスタは改めて己の任を心に掲げる。
イリアナスタ本人以外は誰も知らない使命。執事のオスカーすら、使者の用件の内容までは知らされていなかった。
「あの子こそが“善”の体現なのですね。わたくしの使命は――あの子の成功と幸福を奪いつくすこと! 悪を示す最良の方法は善に対抗することだと、重々心得ております」
イリアナスタは祈りの言葉を口にする。
そうして気を落ち着けると、ゆっくりと面を上げる。その美しい貌に浮かぶのは、闇に染まった黒蜘蛛の笑みだった。
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