二つの脳

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「此処までは段取り通りだ。しかし次は頼んでいたものだが。、本当にこれを脳に直結させられるのか。いや、させなければ此処まで作った意味もない」  水槽の中のむき出しの脳は、緑色の培養液につかり確かに生きていた。薄暗い研究所を照らすような、淡い光を放つ水槽は揺らめきながら、みすぼらしい姿の一人の研究員を照らしていた。  電極の取り付けは失敗の連続であった。柔らかな脳に物質を近づけるだけでも緊張和連続であった。しかし、用意した釘の様な電極を自分の右腕を模したロボットアームで脳に突き刺した。 「クソ!死んだのかっ、脳に傷が、、、、、、、」  思った以上にデリケートな器官であった為、突き刺した電極の重みで少し脳に穴が開いてしまった。しかし、暫くモニターを見ていた男は”まだ大丈夫だ”と呟き次なる仕事に取り掛かった。  この日から、脳は少しずつ傷を自らの治癒能力によって治していった。男は思った通りの結果になり、にやりと笑った。以前、脳を損傷した人が自力で修復出来た例が有った為の賭けだった。 「ボディ。ボディを作らねば、此処までやって出来なかったでは済まない」  しかし、今までとは違いボディ作りは自分の想像を超えて難航して行った。その間、脳は肥大化し少しずつ人間の脳と言う形を崩した。まるで枝が伸びる様に脳は成長と言う名の進化を遂げていた。
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