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食事が癖になる
風呂から上がって、さてさてご飯食べますかと思ったときだった。
…ご飯ってどこで食べるの?
そう言えばそうだ。どこで食べるか全く分からない。あの男が案内…してくれないよな…。うん。どうしよ。
悩みながら、いつの間にか用意されていた服を着る。ゆっくりとした、膝より下くらいのラインに花柄だ。案外まとも?
などと考えているがあたしにこういうのは分からない。
「あ、上がりましたか。馬子にも衣装…にはなれませんでしたね。さて、行きましょう」
何か、意味は分からないが褒められてはいない気がする。
というか、ちゃんと、案内してくれるらしい?奴隷として来た割にはかなり状況が良くないか?スラムのときの方が酷かったぞ?
「い、いや…あたし奴隷だよな?」
「奴隷として扱われたいならその通りの事をしますけど?まぁ、私にそんな趣味はないので。」
変だ。大体なら何であたしを買ったのかが謎だ。
「じゃあ、何であたしを買ったんだ?」
「強いて言うならその目ですね。諦めているようですがまだ執着している様な目が気に入ったんですよ。欲しいな。と」
「ふうん。目ねぇ。」
あたしは死んだ目だったと思うけど?
「欲しいなと思った奴に野宿は無いんじゃねーの?」
「まぁ、細かい事は良いんです。」
あたしは細かくないと思う。
そんなこんなで、話していると食事をする場所にたどり着いた
「あんた歩くこともあんだな。」
「運動不足は良くないので。」
「さて、食卓に付きますよ」
なるほど、食事するところは食卓というらしい。これから色んな言葉が分かっていくんだろうか?
縦に広く、赤い布が引かれてあるテーブルで横に向かい合って椅子があり、あたしの席だと言われたので座る。
「頂きます」
「?いただきますって何だ?」
手を合わせて、そう呟いたことに不思議に思う。
「頂きますと言うのは、食べる前の挨拶らしいです。死んでくれた動物に感謝を込める意味合いなどがあるそうですよ?」
「へぇ、あたしは殺された後にそんなこと言われても嬉しくないけどな。」
「ですね。私も嬉しくありません。」
何どと言いながら、手を合わせる姿は、あたしには理解出来なかった。
「さて、食べて下さい。貴女が食べないと廃棄になるだけなので」
そう言われて、おずおずとパンを一口齧る。
さくさくしているのにふわふわで、柔らかいパンがあたしの心を掴むのは早かった。
「旨い!凄い、こんなの初めて食べた!!」
はしゃぐ。それほど旨かったのだ。次に、シチューを飲んでみる。濃くて、黒くないものは初めてだ。なるほど本当のシチューは白いのか。
「も、もしかしてこれは…?」
渡された慣れないスプーンで四苦八苦しながら掴んだのは、まさか…肉?
「お肉ですよ。味わって食べて下さい」
恐る恐る口を開き、下手くそなスプーンの持ち方で肉を頬張る。とろりと蕩けるようなお肉は今まで食べて来た中で一番旨かった。
「おいひい」
「食べながら喋らないで下さい。良かったですね。」
可哀想なものを見る目だったが関係ない。
と言うか、スプーンの持ち方が上手い。こういう所で育ちの差が出るのか。と少し寂しくなった。
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