はじまり

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ヤエは白木の引き戸を開けた。 とたん、思わずマスズは悲鳴をあげそうになった。 「あら、オババ様。」 戸のスレスレに皺だらけの白髪の老婆が立っていたのである。 マスズは、唇を噛み悲鳴を留めた。 「そちらは?」 ギロリ、とオババの真ん丸い目玉が動いた。 マスズは気を静めると胸に手を置いて一礼した。 「ナのマスズと申します。」 「ゑびす様よ。オババ様」 ヤエの言葉にオババは、さらにまじまじと見た。 「ほぅ。生きたゑびすかの。」 「ええ、ナから流れてきたのですって。」 「ほぅ。」 オババはじっ、と見つめると視線を外した 「それよりも、ずぶ濡れではありませんか。ヤエ、湯殿に案内しておあげ。」 「はい。」
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