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マスズは温泉に身を浸けながら、生き返った心地がしてほう、と息を吐いた。
(まさか、温泉があるとはなぁ。)
湯殿に案内されたマスズは目を丸くした。
一抱えあるほどの大きな石が積み上げられ塀を作っておりその向こうには竹林だ。
石の湯船にはこんこんとお湯が湧き出ていた。
温かい湯を顔に浴びると天を仰いだ。
(生きたゑびす、ねぇ。)
ゑびすとは、漂流物を指す。
そして、海を漂って来たものの中に神性を見、神として崇める漂流神も含まれる。
…あとは、流れついた死体もゑびすと言われる。
(…死体の方だろうな。うん。)
温泉から出ると、蔓で編んだ籠に白い貫頭衣が入っていた。
自分の服は、ヤエが洗っておきますね。と言っていたからこれが代わりの服なのだろう。
マスズは、貫頭衣を被るように着ると青い帯を腰に巻いて結んだ。
丈は足の踝(クルブシ)まであり、なんだか落ち着かない気分になる。
足を広げてどこまで足が動くのか確認してみる。
頭一つ分で限界のようだ。
蹴りはどうなのであろうと振り上げた瞬間、扉が開きヤエが入ってきた。
「!?」
「まあ。」
ヤエは目を丸くして驚いた。
すっ、とマスズは足を下ろすと羞恥を隠すように手で衣の皺を伸ばした。
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