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すると、どこからか銃声が聞こえる。また戦闘が始まったのだ。音は段々近付いてきて、とうとう私たちの頭上を銃弾が飛び交い始めた。私は
「これはマズイ。逃げなくては!」
と、人間の姿になり、勢い向かいのビルの中に駆け込んだ。ビルの中は荒れ果てており、無人だった。見渡すと、吹き抜けのホールから上へ向かって螺旋階段が伸びている。とりあえず高いところへ上ろう、と階段を登り始めた。
私はただ黙々と登り続けた。階段は大人が一人入れるくらいの狭い幅で、気が遠くなる程上空へ続いていた。もうどのくらい登って来たのかも分からない。脚がガクガクしはじめ、
「もう駄目。これ以上は無理」
と座り込んだ。すると突然、何処からともなく小さな男の子が現れて、
「大丈夫。僕が手伝ってあげるから」
と、私のお尻を押すのである。男の子は白い肌に輝く金髪で、緑色の眼をしていた。私は不思議なことに、
「あなたは誰?」
とか、
「何処から現れたの?」
とは思わなかった。
「よし、そういう事なら頑張ってみるか」
と、再び階段を登り始めたのである。男の子は始めは私のお尻を押していたが、途中から私の脚が少し楽になって来たので、手を繋いで男の子が前を行き、私が後を付いていく形で上った。
とうとう屋上に出た。パッと明るい光が目に飛び込んだ。辺り一面真っ白な雲が絨毯の様に敷き詰められており、何処までも続いていた。上を見上げると、抜けるような青い空が広がって、真ん中に銀色の太陽が輝いている。
「そうか、天上に着いたんだね」
と、嬉しくなったところで目が覚めた。私は風邪で熱を出し、寝込んでいたのだった。起きてみれば気分は爽快で、熱も下がっていた。
「あれは守護天使かな?」
と、体温計を仕舞いながら呟いた。
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