第一章 訪問者 場面一 転校生(二)

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第一章 訪問者 場面一 転校生(二)

「あそこ、クラブも確かすごいぜ。テニスとか陸上とか全国レベルのはず」 「いつも思うんだけど、何でそんなに色々知ってるんだよ。別に陸上部でもテニス部でもないのに」 「それは単なる趣味だけど。な、すっげえ成績よかったって噂なんだぜ。お前とどっちが上かな」 「多分、向こうのほうじゃないのか? 上ノ京高校って名門だし」  思ったままを答えると、岩城は苦笑する。 「相変わらず、張り合いねーのな。野口とか、絶対ピリピリするぜ。こんなとき、編入試験満点の理由(わけ)ありの転入生とか、ドラマでありそうじゃん?」 「ドラマというよりマンガだよ、それじゃ。大体、校内順位が上がった下がったって、今頃言っててどうするんだよ。野口だって、別に推薦入試を狙ってるとかいうわけでもないだろ?」 「そりゃまあ、理屈はそうだけどさ。やっぱ、顔が見えるライヴァルって違うじゃん。たとえ校内でも、一位が二位になった、三位が四位になった、となりゃ、心中穏やかじゃないし」 「そんなものかな……」 「絶対、そんなもんだって。大体、親がうるさいじゃん。お前、どっか抜けてるよな。大体、お前ぐらいだぜ。進路調査票白紙で出しつづけてる奴。一体どんなとんでもないところ狙ってんだ、この秘密主義」 「……」  祐一は肩を竦める。話が一区切りしたところで、二人はそれぞれ勉強に戻った。そういえば、七月にはまた三者面談がある。そのことを思うと、祐一の気持ちはわずかに重くなった。
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