第一章 訪問者 場面二 SHR

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第一章 訪問者 場面二 SHR

 朝のショートホームルーム(SHR)で、転校生は自己紹介のために教壇に立った。最初なので様子見のつもりなのか、昨日と同じ前の学校の学ランだった。ちなみに三年一組は国公立理系を受験するクラスで、男女比は二対一、制服・私服比も二対一というところである。  一瞬、安人は祐一に眼をとめ、かすかに笑ったのが判った。  一組の担任は、大内という落ち着いた雰囲気の五十代の女性で、担当教科は英語だ。大内の「転校生を紹介します」という言葉に続き、教壇の安人はすらすらと自己紹介をした。 「中里安人(なかさとやすひと)です。京都の上ノ京高校から来ました。えーと、親父の転勤で、こんな時期外れの転校になりました。もう一年ないですが、どうぞよろしく、以上!」  明るい声で言い、軽く頭を下げる。大内は教壇に戻りながら言った。 「中里くんの席はあの一番後ろになります。―――あと内原くん、それに浅見さん」  名を呼ばれた祐一は席を立った。廊下側の席で、浅見も席を立つ。 「紹介しておくわね。うちの委員長の内原くんと副委員長の浅見さん。もし何かあったら相談してみるといいと思いますよ。二人ともとてもしっかりしてるから」 「へえ……」  安人は一瞬意外そうな表情になり、頬に笑みを浮かべる。 「二度目だな。―――よろしく、内原。それから、初めまして、浅見さん。俺男子校だったんで、女性は緊張するんだ、ホント」 「全然そんな風に見えないわよ、中里くん」  横からおかしそうに大内が口をはさんだ。安人はゆっくりとした動作で席に着き、それで朝のショートホームルームは終了になった。
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