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曹仁が階段を降りると、そこには参謀の満寵が立っていた。彼は水によって崩れ始めた城壁の補強工事を指揮していたはずである。
「どうかしたのか、寵……?」
曹仁のあからさまに気落ちした声色に満寵の眉間に皺が寄る。
「どうしたもこうしたもありませんって、先輩。何弱気になってんスか、マジありえねぇー」
そう悪態を吐いて溜息をついた後、きっと顔を引き締めて拱手する。
「どうか悲観なさいますな、ここで弱気になれば敵の思う壺です。この水も一時的なもので、直に引きます。どうか城を堅く守り、魏王の信頼にお応え下さい」
満寵はそれだけ言うと、一礼して忙しそうに駆けて行った。
だが、曹仁にとって最早水が引こうが引かまいが【敗北】という2字が頭からこびりついて離れなかった。
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