第1話 猫神さまと運命の赤い糸

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「え、猫?」 「早く! その猫、追い払ってくれよ!」  茶髪男が私の後ろに隠れようとする。かなり必死に。足元の猫は毛を逆立たせ、低い声でうなりながら、こっちをにらんでいる。  この人、猫のこと怖いのかな? ヤンキー三人相手に、喧嘩していたくせに? 「あ、あのぅ、猫ちゃん?」  私はにっこり、猫に微笑みかける。しかし猫は素早く私の後ろに回り込み、茶髪男にとびかかった。 「わぁ! やめろっ! おいっ、早く追い払え!」  猫は茶髪男の背中に爪を立て、おんぶするみたいにしがみついている。茶髪男が暴れても、全然離れようとしない。 「あっ、えっと……猫ちゃんっ、これ食べる?」  私は咄嗟に持っていた焼き芋を差し出した。男の背中にくっついている猫が、ちらっと私のほうを向く。 「こ、こっちにおいで。お芋、あげるから」  ゆっくり後ずさりしながら焼き芋を見せると、猫が背中から飛び降りた。そしてそろりそろりと私に近づいたあと、ぱっと焼き芋に飛びつきそれを口にくわえる。 「あっ」  それは本当にあっという間のできごとだった。猫は私の焼き芋をくわえたまま、ものすごいスピードで神社のほうへ走り去っていった。  ああ、私の焼き芋……さようなら……
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