第6話 織姫のシュークリーム

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「紅子ちゃんとあっちの恋野先輩って付き合ってるの?」  あっちの恋野先輩っていうのは、生徒会の恋野先輩じゃないほうって意味だろう。 「ううん。付き合ってないよ」  その質問はもう何度も受けている。新学年になってからは、飽きるほど。だから答えるのにも、いい加減飽きてきた。 「でも仲いいよねぇ。いいなぁ、春菜ちゃんも紅子ちゃんも彼氏がいて」 「だから彼氏じゃないって」  葉月はちょっと天然だ。お前が言うなって恋野くんに言われそうだけど。 「葉月はいないの? 好きな人」  春菜が聞いた。私はどきっとする。 「えっ、い、いないよぉ、私はっ」  葉月が両手をブンブン振って否定する。頬がほのかに赤く染まっている。 「絶対いるでしょ。わかりやすいなぁ、葉月は」  春菜がくすくす笑う。 「ねぇ、今日家庭科で作るシュークリーム、その人にあげちゃえば?」 「え、ええー!」  葉月が大げさにのけぞって、驚いている。 「学校で作ったシュークリームを好きな人にあげると、二人はくっつくって噂だよ」 「え、そんな噂あるの!」  今度は私があわてて聞いた。  だってシュークリームなんかで二人がくっついちゃったら、縁結びの神さまの出番がなくなっちゃう。 「うん。だから今日はみんな張り切ってるんだよ。紅子もあげれば? あっちの恋野先輩に」  春菜がにっこり私に微笑む。 「や、私はいい。は、葉月は?」  私はおそるおそる葉月に聞いてみる。あげるって言ったらどうしよう。  そんな私の前で、葉月は静かに首を横に振った。 「私も……いい」  なんだかすごく哀しそうに微笑みながら。
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