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放課後、春菜が部活に行ってしまい、私は葉月と二人で図書室に向かった。今年度、私たちは図書委員になったのだ。
誰にもあげる予定のない私たちのシュークリームは、袋に入れてカバンの中にしまってある。
「あ、あのさ、葉月」
「なぁに? 紅子ちゃん」
私たちは色紙を折ったり切ったりして、図書室に飾るポップ作りをしていた。みんなにおすすめの本を紹介するため、司書の先生のお手伝いをしているのだ。
もうすぐ七夕だから、私たちは織姫と彦星を折り紙で作って飾るつもりだ。
「葉月は……ほんとうにあげなくていいの?」
「え?」
葉月が不思議そうな顔で私を見る。
「シュークリーム」
ほんとうは葉月も……赤星先生にシュークリームをあげたいんじゃないかなって思ったから。
葉月は少し黙ったあと、やっぱり寂しそうに笑って言う。
「私はいいの。きっと迷惑になっちゃうから……」
私はぎゅっと唇をかんだ。葉月の好きな人が赤星先生だって、私は知っている。
「でも……やっぱり自分の想いは伝えたほうがいいと思う」
葉月が顔を上げて私を見る。
「わ、私も、勇気出して好きな人にチョコレート渡そうとして……フラれちゃったけど……でも想いは伝えられてよかったって、今でも思ってるから……」
言いながら桜庭先輩のことを思い出し、ちょっと泣きそうになった。
「紅子ちゃん……」
葉月がつぶやいた時、図書室のドアが開いた。私ははっと息をのむ。
入ってきたのは、さっき外へ出て行った司書の先生ではなかった。
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