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「ああ、まだいたのか、お前たち」
葉月がすっとうつむいて、その頬がうっすらと赤く染まる。
「司書の先生が用事で来れなくなったから、俺が代わりに戸締りに来たんだ。もう遅いから、帰る支度をしなさい」
そう言って中に入ってきたのは、赤星先生だった。
「あっ、えっと、もうそんな時間だったんだ」
私はなぜかすごくあせってしまった。だってここで先生が登場するとは思っていなかったから。
葉月は顔を赤くしたまま、うつむいている。
葉月、いつも先生の前でこんなだったの? いままで気にしていなかったから、わからなかったけど。
それとも私が『想いを伝えたほうがいい』なんて言っちゃったから?
私はちらりと葉月のカバンを見る。あの中にはシュークリームが入っている。渡すなら今だ。あのシュークリームを渡せば……先生とうまくいくのかも……
「ほら、織本も……早く支度しなさい」
「はい……」
葉月が机の上を片付け始める。
「あとでもう一度来るから。気をつけて帰れよ」
先生はそう言って出て行ってしまう。
どうしよう。引きとめたほうがいいのかな……
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