第6話 織姫のシュークリーム

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「葉月」  私は葉月の指からそっと手を離して言う。 「私、先に帰るから。シュークリーム……渡したら?」  葉月が驚いた表情で顔を上げ、私を見つめる。 「絶対、大丈夫だから」  葉月は黙って私を見ている。私はすっと席を立ち、図書室から出る。  もうすぐ先生が戻ってくる。葉月と二人だけになれる。その時先生の指にあの糸の先を結べば……二人は結ばれるんだ。  なんとかしなくちゃ。私が絶対なんとかしなくちゃ。  窓の外では雨が降り始めていた。廊下の向こうから先生の足音が聞こえる。  先生が図書室に入ったのを確認して、私も反対側のドアから、身を隠しながら中に入った。
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