第6話 織姫のシュークリーム

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「これっ、受け取ってください! 私、慧ちゃんのことが好き!」  私は机の下でその声を聞く。こっちまで顔が赤くなりそうだ。いやいや、それよりも早く、あの糸の先を先生の小指に結ばなきゃ。 「葉月……俺は……」  その時私の後ろからすっと手が伸びた。そして私のつかめなかった糸をつかんで、それをそっと先生の小指に巻き付ける。 「へたくそ」  驚いて振り向いた私の後ろで、恋野くんがにっと笑った。 「いいの! だめなのはわかってる。私はただこの想いを伝えたかっただけなんだから!」 「いや、その……まいったな……」  先生がすうっと手を上げて、頭をかいた。その小指には赤い糸がつながっている。 「葉月からそんなことを言われるとは思ってなくて……」 「だからほんとにいいの! 私が言いたかっただけで……」 「違うんだよ。それは俺が言おうとしていた言葉だから」 「え……」  葉月がシュークリームを持ったまま、顔を上げる。先生は困ったように笑って、そっと葉月の手からシュークリームを受け取った。 「俺も言おうと思ってた。葉月が学校を卒業したら」 「慧ちゃん……」 「葉月のことが好きだって。結婚しようって」  葉月の顔がかあっと赤くなる。私もなぜか力が抜けて、そのまま後ろに倒れてしまった。
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