第6話 織姫のシュークリーム

12/15
前へ
/185ページ
次へ
「う、わぁっ」  私の後ろで声がする。 「あっ」  私は恋野くんのお腹の上にしりもちをついていた。 「だ、誰かいるのか!」  叫ぶ先生の声。ひやっと汗が出た私を机の奥に押し込んで、恋野くんが立ち上がった。 「いやぁ、俺、さっきからずっと後ろの席で寝てたのに、先生たちラブシーン始めちゃうんだもんなぁ」 「こ、恋野っ! お前、もしかしていまの……」 「聞いてましたけど?」  恋野くんがにやっと笑って先生の前に立つ。私はひやひやしながら後ずさりする。葉月も真っ赤な顔のまま、突っ立っている。 「先生が生徒とそーゆー関係だったなんてね。まぁ、葉月さんかわいいし、しょうがないか。俺、いま聞いたこと全部、黙っててやってもいいけど? 数学の成績上げてくれるなら」 「恋野ー、お前なー」 「いや、冗談です。誰にも言わないって」  恋野くんがははっと笑って、先生と葉月に手を振る。 「では、お幸せに」  そう言って図書室を出て行く恋野くんを確認してから、私も後ろのドアから音を立てずに廊下へ出た。
/185ページ

最初のコメントを投稿しよう!

129人が本棚に入れています
本棚に追加