129人が本棚に入れています
本棚に追加
「う、わぁっ」
私の後ろで声がする。
「あっ」
私は恋野くんのお腹の上にしりもちをついていた。
「だ、誰かいるのか!」
叫ぶ先生の声。ひやっと汗が出た私を机の奥に押し込んで、恋野くんが立ち上がった。
「いやぁ、俺、さっきからずっと後ろの席で寝てたのに、先生たちラブシーン始めちゃうんだもんなぁ」
「こ、恋野っ! お前、もしかしていまの……」
「聞いてましたけど?」
恋野くんがにやっと笑って先生の前に立つ。私はひやひやしながら後ずさりする。葉月も真っ赤な顔のまま、突っ立っている。
「先生が生徒とそーゆー関係だったなんてね。まぁ、葉月さんかわいいし、しょうがないか。俺、いま聞いたこと全部、黙っててやってもいいけど? 数学の成績上げてくれるなら」
「恋野ー、お前なー」
「いや、冗談です。誰にも言わないって」
恋野くんがははっと笑って、先生と葉月に手を振る。
「では、お幸せに」
そう言って図書室を出て行く恋野くんを確認してから、私も後ろのドアから音を立てずに廊下へ出た。
最初のコメントを投稿しよう!