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「もう、あせったー。いつの間にか現れるんだもん」
私は恋野くんと並んで廊下を歩きながら、ため息をつく。
「お前がぐずぐずしてるからだ。てか、なに一人でやろうとしてるんだよ。俺に内緒で」
「だって……」
私一人でもできると思ったんだもん。恋野くんに頼らなくても。
「お前みたいなグズには無理だ。これは縁結びの神がする仕事なんだぞ? 俺みたいにスマートに美しくやらないと……」
「なによ。たまたまうまくできたからって」
私は頬をふくらませる。窓の外からは雨の音が聞こえてくる。
「それよりなんで私がここにいるってわかったの?」
「あー、それはお前を探して校舎の中歩きまわってたら、図書室の前に不審な動きしてるやつがいたから、ついてったってわけ」
不審な動きって……私は真剣だったのに。
「な、なんで私のことなんか探してたのよ?」
私は立ち止まって恋野くんを見る。恋野くんも「あっ、そうだ」となにかを思い出したように足を止める。
「俺にシュークリームくれ」
「へ?」
「桜庭が自慢してたんだ。シュークリームもらったって。家庭科で作ったんだろ? 俺にもくれよ」
恋野くんが私の前に手を差し出す。私と赤い糸のつながった手を。
私は仕方なくカバンの中からシュークリームの入った袋を取り出し、恋野くんの手にのせた。
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