第6話 織姫のシュークリーム

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「おっ、うまそうじゃん」  恋野くんはがさがさと袋の中からシュークリームを取り出して、いきなり食べた。 「うん、うまい」 「それほとんど、春菜が作ったから」  私が作ったわけじゃないもん。 「でもお前だって1パーセントくらいは貢献したんだろ?」 「ちょっ、1パーセントって……せめて10パーセントって言ってよ!」  私が怒ったら恋野くんがおかしそうに笑った。あれ、なんだか今日は機嫌がいいみたい。  その時私は思い出した。さっき春菜が言っていた言葉を。 「あっ、ちょっと待って! やっぱりそれ食べちゃダメ!」 「は? もう食っちゃったよ」  恋野くんが最後の一口を口に放り込んで言う。 「そんなぁ……」  だって、だって……学校で作ったシュークリームをあげたら、その二人はくっついちゃうんだよ…… 「恋野くん、シュークリームの噂、知らないの?」 「シュークリームの噂? なんだそれ」  恋野くんがあきれたように歩き出す。私の指から赤い糸が、恋野くんに向かって伸びていく。  食べちゃったのは仕方ない。噂なんてしょせん、この学校の生徒が作ったもの。それより信じるべきは、神さまが結んだこの赤い糸。  だったらこの糸さえ切れてしまえば、私が恋野くんとくっつくことはありえない。 「あ、あとさ」  昇降口まで歩いて、恋野くんが振り返った。 「傘入れて」 「は?」 「俺、傘持ってないから。傘入れて」  外はざあざあと音を立てて雨が降っている。私は小さくため息をつきながら、カバンの中から折りたたみの傘を取り出した。
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