第6話 織姫のシュークリーム

15/15
前へ
/185ページ
次へ
 一つの傘の中に、二人で入って、雨の中を歩く。恋野くんに出会うまで知らなかったけど、私たちは神社を挟んで北と南、けっこう近くに住んでいた。 「お前、チビだから」と恋野くんが言って、私の傘を奪われた。そして恋野くんは、私に傘をさしかけてくれる。  なんだかちょっとドキドキした。これって相合傘ってやつだよね。  雨の音が響く中、なんとなく緊張しながら歩いた。歩くのが遅い私に合わせて、恋野くんもゆっくり歩いてくれてるのかな、なんて思ったけど、たぶん気のせいだ。  傘の影から、薄暗くなってきた空を見上げる。  今年の七夕は晴れるかな。晴れるといいな。  葉月と赤星先生のことを思い浮かべながら、恋野くんの隣でそんなことを思った。
/185ページ

最初のコメントを投稿しよう!

129人が本棚に入れています
本棚に追加