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「で、さっきの続きだけど」
ぼけっとしていた私に振り向き、虹乃さんが聞く。
「紅子ちゃんの好きな人って、大雅じゃないのよね?」
「へっ?」
私はびっくりして間の抜けた声を出してしまった。
「ち、違います! ていうか好きな人なんていません!」
「じゃあよかった!」
虹乃さんが両手を胸の前でぱちんと合わせて、にっこり微笑む。
「あ、あのぅ……」
「ん? なあに?」
私はおそるおそる、にこやかな顔のままの虹乃さんに聞く。
「虹乃さんって……もしかして恋野くんのこと、好きなんですか?」
「え、あっ、聞いてないんだ、紅子ちゃんは、大雅から」
「なにをですか?」
すると虹乃さんはにこっと笑って私に言った。
「私、大雅の元カノなんだー」
元カノ、元カノ、元カノって……
「えー! 虹乃さん、恋野くんと付き合ってたんですかー!」
「うん。中学の時だけどね」
中学の時……恋野くんは虹乃さんと付き合っていた。
私は二人が付き合っている姿を想像しようとしたけど、二人の中学時代を知らない私には、なにも浮かんでこなかった。
「でもちょっとだけだよ? 三か月くらいだったかなぁ」
「三か月……」
「あの頃の大雅、次から次へと彼女変えてたからね。女の子と付き合っては別れ、付き合っては別れ……私もその犠牲者の一人。いったい何人の女の子が泣かされたことか。あ、私は泣いてないけどね?」
恋野くんのお兄さんが言ってたのって、それのこと?
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