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「も、モテてたんですね……恋野くん」
なんて言ったらいいのかわからず、そう言った。虹乃さんは、あははっと明るく笑う。
「まぁ、黙ってりゃカッコいいからねー、あの兄弟」
「じゃ、じゃあ、お兄さんのほうもモテたんじゃないですか?」
だって顔が同じだもん。
「ああ、兄貴のほうには絶対別れなさそうな彼女がいたから、みんなあきらめてたね」
絶対別れなさそうな彼女……じゃあ優雅さんはいまもその人と付き合っているんだろうか。
「でも大雅って……高校入ってから、変わったんだよね」
虹乃さんがふっと私から視線をそむけてそう言った。
「女の子と付き合わなくなった……とかですか?」
「そう。ついでに他のことにもまったく興味なくなったっていうか、いっつもつまんなそうな顔してるでしょ?」
「まぁ、だいたいむすっとしてるか、怒ってますもんね」
虹乃さんがまた私を見て、うんうんとうなずく。
「やっぱり大雅は……あの子のことしか興味ないんだ」
「あの子?」
「そう。大雅の、好きな子」
心臓がまたどきんとした。そして胸の奥のほうが、じんわりと痛くなってきた。
恋野くんって……好きな人がいるんだ。
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