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仕方なく赤い糸を手に持ったまま、恋野くんと学校に来た。恋野くんはずっと黙ったままで、教室には行かず中庭のほうへ歩いていくから、私もついて行ってしまった。
だって……恋野くんがこんなに考え込むなんて、初めてだったから。
恋野くんはいつものベンチに座っても、しばらくずっと黙っていた。私はその隣に腰掛けて、一緒に黙っていた。
校舎に予鈴のチャイムが鳴った。渡り廊下を教室へ向かって、生徒たちが走って行く。
「あー!」
その時突然恋野くんが頭を抱えて叫んだ。
「こ、恋野くん?」
「いっくら考えても、わかんねー! なんで虹乃が優雅と付き合いたいんだ? あいつ優雅に彼女いるって知ってるのに。それとも彼女から奪ってでも、優雅のことが欲しかったのか?」
恋野くんが私に訴えかけるように言った。私はちょっとビビりながらも、自分の意見を言ってみる。
「それは……違うような気がする」
「虹乃はお前に言ってた? 優雅のことが好きだとか」
「ううん。お兄さんには絶対別れなそうな彼女がいるって言ってただけ」
「じゃあなんでだよー。それに糸が切れるってのも、わっかんねーし! あのクソ猫めー!」
恋野くんが猫神さまに八つ当たりしている。その時、渡り廊下を渡る生徒が一人、こちらへ向かって歩いてきた。
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