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「あれ、お前が作ったの?」
「え、まぁ……」
適当にごまかしながら、私はふっと思い出す。お父さんが昔言った言葉を。
『ここには猫の神さまが住んでいるんだよ』
「あのっ、もしかして……神さまが怒ったんじゃないですか!」
私は思わず声を上げていた。
「お供えしてあったものを食べちゃったから、猫の神さまが怒って、追いかけてきたんじゃないですか?」
「は? 猫の神さまってなんだよ?」
茶髪男があきれた顔で、長めの髪をくしゃくしゃとかきまわす。
「まぁ、いいや。とりあえず助かったから。ありがとな」
そう言って茶髪男が背中を向ける。
「あっ、ちょっと待ってください!」
私は急いで、カバンの中から絆創膏を取り出した。よく転ぶ私は、いつも持ち歩いているんだ。
「これ。よかったら使ってください!」
茶髪男の前に回り込み、絆創膏を押し付ける。ちょっと驚いた顔をした男が、背の低い私を見下ろし、そのまま私の膝を見た。
私はそこで初めて、自分の膝からも血がにじんでいることに気がつき、逃げるようにその場を立ち去った。
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