第7話 絡まり合う心

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「まだこんなところにいるのか? 授業始まるぞ?」  それは恋野くんのお兄さんの優雅さんだった。図書室から出てきたのか、難しそうな本をたくさん脇に抱えている。  だけど恋野くんは優雅さんのことを見ようとしない。優雅さんは小さくため息をつく。 「お前がサボるのは勝手だけど、この子まで付き合せるなよ」  そして優雅さんは私を見てやさしく言った。 「授業始まるから。早く戻ったほうがいいよ」 「あ、はい」  優雅さんがすっと後ろを向いて、また渡り廊下のほうへ戻り始める。  その時だった。私の目に、見慣れたものが見えたのは。 「え?」  どうして? どうしてあれが見えるの?  本を持った優雅さんの小指。そこから赤い糸が長く伸びている。  私たちは優雅さんの縁結びなんかしていない。だから優雅さんの赤い糸が、私に見えるはずがない。  それなのにどうして…… 「こ、恋野くん!」  私はあわてて恋野くんの肩をゆさぶる。 「いまっ、見えなかった? お兄さんの赤い糸!」 「は?」  恋野くんが顔をしかめる。 「見えたでしょ? 赤い糸がつながってたの!」  恋野くんはどうでもいいように私から顔をそむけた。 「もう行けよ、教室」 「でも恋野くんは……」 「俺はいいから。早く行け!」  恋野くんが怒鳴るから、私はびくっと肩を震わせて、走って教室に向かった。
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